2,宣長はひとりぼっちでした。歌の先生に師事したこともありました。
京都で医者の勉強をしている頃には、歌会にも参加しました。
しかし自分の考える歌との距離を感じ、孤独な思いを持ちつづけたのです。
年ころ此道(歌の道)に志ありて、絶えず詠みける言の葉もはかばかしく
善し悪し見わくる人もなき事をうらみて、同じ題にておもひをのべ侍りぬ
和歌浦 たちよるかたを 浪間にぞ 夜半の千鳥の 鳴あかすなる
浜千鳥 鳴こそあかせ 和歌の浦や たつらんかたも なみのよるよる
「懐紙書様手本」(かいしかきざまのてほん・〈2〉)は
その頼りない先生・有賀長川(あるが・ちょうせん)より伝授された和歌懐紙の書き方です。
歌の出来不出来とは別にこのように書くと一枚にきちんと収まるという方式です。
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