和歌は宣長の学問の原点ともいえるもの。歌を詠む中で芽生えた「和」への関心は、やがて『源氏物語』から『古事記』研究に繋がり、『古事記伝』の執筆へと展開していきます。また、宣長にとって歌を詠むことそれ自体が楽しみでもありました。松坂の人々と親しむきっかけとなった嶺松院歌会や、祝い事、来訪者の歓迎といった、折に触れて行われる歌会の場は人脈を拡げる絶好の機会であり、晩年宣長と関わった妙法院宮のほか、芝山持豊、日野資枝(ひのすけき)ら公卿との関係も、歌を通して深められたものでした。宣長と歌の様々な側面にクローズアップする展示です。
【会 期】 2017年12月12日(火)〜2018年3月4日(日)
【展示総数】 76種83点(うち重要文化財37点)
※予告なく変更の可能性があります。
【展示説明会】12月16日(土)、1月20日(土)、2月17日(土)
いずれも午前11時〜(無料)
【主要展示品】☆初出品 ◎国重要文化財
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「亀の歌」本居宣長賛

このかめよさらぬ別れも 萬代の後の千世をや なほいのるらむ
(仲睦まじい親子の亀も、いつか別れるときが来るだろう。でも、それはずっと先の話。幸多かれと祈っています。)
素朴ながら味わいのある亀の親子の絵に、宣長が幸いを願う歌を寄せたものです。このように宣長は、晩年になると、人からの依頼を受けて絵に歌を添えることも多くなっていきました。
☆「大矢重門詠草」大矢重門詠 本居宣長添削 1巻

美濃国(岐阜県)の門人・大矢重門(おおや・しげかど)の歌をまとめたもので、宣長による加点(添削)の文字が確認できます。重門は特に和歌に優れ、松坂を訪れて宣長の講釈を聴くなど、熱心な門人でした。今回は、2巻の資料のうち1巻を展示します。
◎「井手の玉河図」宮脇有慶画 本居宣長賛 1幅
鮮やかな山吹の咲く川を馬に乗って進む藤原俊成。『千載和歌集』の撰者です。平安時代から鎌倉時代にかけて活躍した歌人で、息子は『小倉百人一首』で有名な藤原定家。まさに、歌の神様のような存在です。ここに書かれる歌は宣長の詠歌ではなく俊成の歌。画賛には、稀にこうして古歌を書くこともありました。 |