midashi_g.gif 源四郎店(ゲンシロウダナ)

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 延享2年(1745)4月26日、江戸に着いた宣長(16歳)は、大伝馬町1丁目の叔父小津源四郎躬充の店に寄留した。旅の目的は分からないが、年齢と取り巻く環境から考えて商売の見習いと考えて良さそうだ。

 関心がなかった事は素っ気ない記録からよく分かる。
 『日記』「同四月十七日、趣干東武江城、【同廿六日著江戸】居伯父源四郎店【大伝馬一町目】。同三年三月廿六日、起武江、四月九日帰著本国」(宣長全集・16-6) 『本居氏系図・本家譜』「同二年乙丑四月下江戸、留大伝馬町孫右衛門家店、同三年丙寅三月自江戸帰」(宣長全集・20-85)
 滞在は、翌3年3月26日まで約1年弱でうち切られ帰郷する。記録では僅か2行だ。
 この空白の一年の中で、今残された彼の文字は僅かに11文字だけ。 「延享二歳乙丑五月吉祥旦」。
 本の表紙に書かれるが中身は全く別時期の物(『(今井田)日記』)に再利用される。日記か備忘でもと表紙を書いたが、果たさずに終わったのだろう。

 三村竹清翁が「伊勢店」(『三村竹清集』7-301)で引く某家の文化13年の店定目に
「一、見勢ニ而本ヲ見ル事無用之事」
とある。この定目を月の28日に、使用人達は読んで聞かされた。
 宣長はただの使用人ではない、といっても通用しない。
 読書の楽しみを知る宣長が、そんな環境に馴染めるはずはなかった。


>> 「江戸店」
>> 「叔父・小津孫右衛門」
>> 「江戸の誘惑」



(C) 本居宣長記念館


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