|
来訪者が友人だとお酒の出るときもある。
寛政11年5月8日、京の橋本経亮が、大平、笠因の案内で鈴屋を訪れた。
久しぶりの対面で、歌の贈答があり、酒肴が出た。先生から一杯と経亮が差す 『橋本経亮歌文集』に、
「牛貝吹く頃、松坂稲掛の家に着きたり、此処にて共に来りし田舎人には別れたり、大平と共に出で笠因某と本居翁を訪う
年久に会はざりしかど七十の老とも更に見えずぞありける
返し 宣長
あら玉の年まねらへて橘のかぐはし君にあふが嬉しさ
又返し
末の世の下枝にしあれば立花のいかで昔の香に匂ふべき
といふ程盃持出て食べよと云ふに先づ翁の参りて後とて瓶子とりつれば飲みて玉ふに
古書はよし分かずとも老らくの齢は君にあえんとぞ思ふ
返し 宣長
七十の齢は物の数ならじ千年を経べき君と思へば
傍らに大平のありて盃を巡りながして
早くより慣れこし君も伊せの海にかくて見るめの珍らしき哉
返し
見るめなき我が寄り来しは伊せの海の清き渚のくたもならまし
とて旅宿に帰りしかば夕暮になりたり、大平訪ひ来れり」
とあり、以下大平との贈答、また訪ねてきた殿村安守との贈答歌が記される。経亮は翌日早朝に松坂を出立した。
ところで、「牛貝吹く頃」って何時だろう。普通は丑の刻、午前2時頃からだが、本当なら午後2時頃と考えたいが、わからない。
【参考文献】
経亮の歌文集は、『近世学芸論考−羽倉敬尚論文集−』所収。
>>「橋本経亮」
|