midashi_b 本の貸し借りの勧め

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 学問の世界を開かれたものにするために、宣長は積極的に本の貸し借りを行った。あまりつきあいがない人でも分け隔てはしない。だから、秘蔵して見せないのは「心ぎたな」いと批判した。但し、貸し借りと言っても宣長の場合は対象は全国だ。今と違って郵便も電話も無い。送ったが途中で紛失した、また相手が死んで返ってこないなどアクシデントも当然ながら生じた。それへの対策も含めて宣長は次のように「本の貸し借りを勧める」

「めづらしき書をえたらむには、したしきもうときも、同じこゝろざしならむ人には、かたみにやすく借して、見せもし写させもして、世にひろくせまほしきわざなるを、人には見せず、おのれひとり見て、ほこらむとするは、いといと心ぎたなく、物まなぶ人のあるまじきこと也、たゞしえがたきふみを、遠くたよりあしき国などへかしやりたるに、あるは道のほどにてはふれうせ、あるは其人にはかになくなりなどして、つひにその書かへらずなる事あるは、いと心うきわざ也、さればとほきさかひよりかりたらむふみは、道のほどのことをもよくしたゝめ、又人の命は、にはかなることもはかりがたき物にしあれば、なからむ後にも、はふらさず、たしかにかへすべく、おきておくべきわざ也、すべて人の書をかりたらむには、すみやかに見て、かへすべきわざなるを、久しくとゞめおくは、心なし、さるは書のみにもあらず、人にかりたる物は、何も何も同じことなるうちに、いかなればにか、書はことに、用なくなりてのちも、なほざりにうちすておきて、久しくかへさぬ人の、よに多き物ぞかし」(『玉勝間』巻1「古書どもの事、五」)
 また、借りた本の扱いへの注意も忘れない。
「人にかりたる本に、すでによみたるさかひに、をりめつくるは、いと心なきしわざなり、本にをりめつけたるは、なほるよなきものぞかし」『玉勝間』巻1。「古書どもの事、六」。
 俗に言う「ロバの耳」。
 本のネットワーク確立、これも真淵、宣長の国学を広く浸透させる力となった。
 学者は「孤」では無くなった。


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(C) 本居宣長記念館


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