midashi_b 床の間の掛け軸

l_b3

 鈴屋の軸というと、「県居大人之霊位」が有名だが、実はこれは特別なもので、普段は堀景山先生の書幅などが掛けてあった。床は、天井が斜めになり奥が高く設えてある。従って少し長めの軸でも掛かるようになっている。



◆「県居大人之霊位」

 読みは「あがたいのうしのれいい」。宣長自書。県居は賀茂真淵の号。大人は先生の意味。
  「あがたいのうし」と訓むことは、『玉勝間』巻6「県居大人の伝」で、本文中に
「あがたゐの大人」とあり、同巻1「あがたゐのうしは古へ学びの親なる事」では、やはり本文中の「県居大人」に「ノ」の字を傍らに添えていることから明らか。
  『古事記伝』巻3のウシ、ヌシの説(宣長全集・9-127)では、「の」があれば「うし」、なければ「ぬし」となる。「県居之大人」と之の字が入らないのは「大人」の場合ウシと訓むためである。
  『文物類纂 一』に

 
「半切、虫食アリ、料紙唐紙、表装、箱書殿村安守 県居大人之霊位ト自ラ謹書シ祭祀ノ際用ヰラレシソ(天明元年十月大人十三年祭ヲ行ハレシ際ノ筆カ)」

とある。

「県居大人之霊位」


◆「春思」(シュンシ)

  読みは「紅粉ロ(土偏に盧)に当たって弱柳垂る。金花の臘酒(ロウシュ)トビを解かす。笙歌日暮れて能く客を留む。酔殺す長安の軽薄児」(『唐詩選解』荻生徂徠)。賈至(カシ)作、堀景山書。『唐詩選』収載の七言絶句。

  大意は、「紅おしろいをつけてお店に出れば、道にはしだれ柳の木が美しい。その柳にも似た私の姿。黄金の花の浮かぶ今年の新酒、さあ春のお酒の口を開けましょう。笙を吹き、歌を歌い、日の落ちるまでお客を帰さずに、長安の浮かれ男たちを酔いつぶしてみせましょうぞ」。

  題の「春思」に、楽しげに見える春の景色も自分にはちっともおもしろくないという気持ちが込められているが、宣長は、この詩に京都での楽しい日々を投影していたのだろう。
  それにしても、景山の字はすばらしい。記念館以外にこの先生の字が残されていないのは不思議だ。


「春思」

上の写真をクリックすると、大きな写真が表示されます。

宣長と大平



◆「上皇西巡南京歌」

 読みは「剣閣重関蜀の北門、上皇の帰馬雲の如く屯す。少帝長安に紫極を開き日月双べ懸けて乾坤を照らす」(『唐詩選解』荻生徂徠)。李白作、堀景山書。『唐詩選』収載。
  玄宗皇帝が、愛妃楊貴妃を喪うものの、安禄山の乱を平定し、少帝都に凱旋するのを詠んだ詩。故郷に帰る宣長へのはなむけとして書いたのであろう。
「上皇西巡南京歌」

「上皇西巡南京歌」

 

>>「宣長の仕事場」
>>「本居宣長四十四歳自画自賛像」



(C) 本居宣長記念館


目 次
もどる