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「くらノ助は子息ヨシカネ(良金)に火鉢を持まいれと言ふ。ヨシカネ不審に思ひ、今四月なるに火鉢のいる事は不審なりと思へ共、まづ持てゆきければ、くらノ助かの連判状をとり出し、引き裂きて焼き捨てたり。ヨシカネ傍らよりこれを見て、立ち出て父に言曰、親人切腹したまへ。其元の心を今や我知りたり。今まではかたき討、といふて城をばわたし、今又命の惜しさに焼捨て逃げん覚悟、今我が親なれども、主人のためには代え難し。今切腹したまへ、介錯せんと云う。返答いかんと云に、クラノ助はわざと云わずして、心をひき見んために、其の言ひ訳為し、而してばなにとすると云へば、ヨシカネ、しからば討ちはなたんと討てかゝる所を、クラノ助たちまち取つて押さへ、今我連判状を焼きしは、もし人の目にもかゝりなば大事の事に及ぶ。又これなくても、誠の侍の心変わることあるべからず。然れば焼き捨てたり。而にこしやくな己めがと云へども、心の内にはあつはれでかしたと思ひけり。」
(原文は片仮名であるが読みやすく変え、漢字も補った。)
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『赤穂義士伝』
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