宣長の本は、完成原稿として版木師に渡されるので、たとえば『言葉の玉緒』のような改訂版が出ることは例外であると思われるが、これもよく調べないといけない。少異ならあるかもしれない。
有名なのは『玉勝間』で、これは内容の差し替えが為された。
また『源氏物語玉の小櫛』は、刊記の「須受能屋蔵板」が「受須能屋蔵板」となっていたので再版で訂正された。本居記念館に所蔵される版木では埋め木(修正)の後が確認できる。
実際には確認していないが、『てにをは紐鏡』にも重大な異同があるという。
また、細井金吾の所でも書いたが、『古事記伝』版本巻5にも初版と再版の異同がある。
この巻には「おひつぎの考」がある。つまり増補した項だ。
例えば、『本居宣長全集』や岩波文庫の『古事記伝』では、「女嶋」、「両児嶋」、「比婆之山」と「おひつぎの考」が3項目ある。これは再版された版本を底本とするためである。初版には「女嶋」と「両児嶋」2項目で、「比婆之山」は無い。また「女嶋」と「両児嶋」も初版には「筑前ノ国人細井氏云」と情報提供者が書かれるのに、再版では「筑前国のある人」と細井の名は消え、増補された「比婆之山」が沢真風の話と明記されるだけである。
このように一枚の版木で印刷する版本ではあるが、異同もあるのだ。
>>「隠されたニュースソース」
>>「本の出来るまで」
(C) 本居宣長記念館
|