おもしろきふみよむときは寝ることももの食ふこともげにわすれけり
朝夕に物食ふほどもかたはらにひろげおきてぞ書はよむべき
食ふものは満ちても消ゆる腹のうちに長く残るはよめる書なり
これは『鈴屋集』に載り、一般に「ふみよみ百首」(実際は68首)と呼ばれている作品。「本を読むことが好きで好きでたまらない」そんな宣長の気持ちがよく表れている。こんな宣長であるから、食事はやはり二の次となったのではないだろうか。
こんな話もある。宣長さんが大和国を旅していて、長谷寺を過ぎた黒崎と言うところで茶店に入った。ここは饅頭が有名で、茶店は何軒もある。有名なのは、「親の乳よりまだ甘いものは松屋の饅頭か城の口」と言われた黒崎名物松屋の夫婦饅頭だが、宣長さんは一向お構いなく、年寄りのいる店を探して入っていく。昔、年寄りの子どもの頃の話ではない。一千年以上も昔の話を聞くために茶店を選ぶのである。味より学問。
ちなみに、この饅頭は現存しないが、大和郡山の城之口餅は今も健在である。
>>『菅笠日記』