midashi_g.gif 玉津島神社

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 宣長が、和歌山に到着するのを迎えた人の中に、玉津島神社の神主高松房雄がいた。早くから宣長と文通して、『古事記伝』や『馭戎慨言』を借覧していた門人である。
 この神社の祭神は、稚日女(ワカヒルメ)尊、息長足姫(オキナガタラシヒメ)尊(神功皇后)、衣通姫(ソトオリヒメ)尊。特に余りの美しさが衣を通して輝いたという衣通姫は、和歌の神様でもあり、宣長にも特別な宮だったと思われる。和歌山滞在中、何度かここに足を運んでいるが、行けば神主は喜び、饗宴が始まるのだった。

  玉津嶋の神主高松房雄主の家にてひるのあるじせられたる、
  あるじに盃さすとて
 道守る此の神垣ともろともに千世もめぐらむけふのさかづき

  此のわたりめづらしき石の多かるを一つ二つひろひて
 来て見ても玉しらぬ身は石をのみひろひてかへるわかのうら波

 和歌山は美しい地名が多い。秋月、鳴神、鷺の森、そして和歌の浦には芦辺、片男波(カタオナミ)、名草山(ナグサヤマ)、玉津島などなど。特に玉津島は、奠供山、雲蓋山、妙見山、船頭山、妹背山、鏡山の六つが、昔は海に浮かぶ島であったのを、眺望し、玉のような島だという意味で命名されたという。
 拝殿後ろには、山の中程には美しい社殿、その下には根上松がある。玉津島神社は、中世には社殿が無く、代わりにこの松を拝んでいたという有名なもの。根上松というのは、これ以外にも周囲には多かったようで、宣長も歌に詠んでいる。また、反対側の山道を登ると、ここが奠供山(テングサン)。和歌浦を一望の下に望むことが出来る。


玉津島神社の扁額

神社の扁額。
後奈良天皇宸翰を写したもの。
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玉津島神社に植えられたサキガケザクラ

神社に植えられたサキガケザクラ。
和歌山大学名誉教授多田道夫先生推奨の桜の花。


> >「奠具山の猿」



(C) 本居宣長記念館


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