「本居宣長四十四歳自画自賛像」
1幅。紙本(楮紙大小各5枚で10枚継)著色。裂表装。本紙122.0×46.5cm。
【伝来】
和歌山本居家から記念館へ。
【指定】
国指定重要文化財。
【賛】
「めつらしきこまもろこしの花よりもあかぬいろ香は桜なりけり、こは宣長四十四のとしの春みつから此かたを物すとてかゝみに見えぬ
心の影をもうつせるうたそ」
【解説】
正座し机に向かう姿を描く。前には花瓶に挿した山桜が置かれる。机には本が広げられ、脇には数冊の本が積み重ねてある。描かれた点景物は、宣長が着す「鈴屋衣」、山桜、短冊、色紙、懐紙、机の脇の本に至るまで宣長の趣味やまた学問を象徴するものが選ばれている。このように宣長と、その人を象徴する文物で埋め尽くされた画面
であるが、しかし実景というより、鈴屋衣というハレの着物を着たこの像は、宣長という人物を網羅的にまた象徴的に捉えたものであり、そこに演出や作意もある。例えば宣長の机は桐の白木であったがそれを朱で描くのは絵としての完成度を高めるための工夫であろう。また瓶の桜、これも実景ではないかもしれない。