今回の展示をごらんいただくために

( ) 付数字はケース番号です。


〈8〉 宣長さんの勉強法
 宣長の勉強法と言ってもいろいろありますが、一番大事なことは、継続です。
 継続するためには、たとえば毎日の生活や交際などもきちんとすることが大事だと考えていたので、日常生活の細々したこと、たとえば収入と支出、冠婚葬祭、仕事の覚えなどをきちんと記録していました。それも一冊に何もかも書くのではなく、目的別にノートを作成していました。たとえば和歌山に行くときには全回の和歌山行きの記録を持参すると言ったようにいつでも活用できる記録を整理しています。
 この他にもいくつかの方法があります。

  1. ていねいに書く これは簡単そうで大変難しいことです。特に『古事記伝』自筆稿本(2)や、(12)ケースの『伊勢物語』や『新撰字鏡』など写本類をごらん下さい。筆跡に乱れがない。誤字がない。見事です。

  2. 図解する 本にはほとんど挿し絵を入れていませんが、思索の過程では図解しています。「天地図」(4)(14) また日常生活の中でも図で描く方が早いときには図を書きます。京都で借りた借家の調子が良いと報じた書簡(8)や自分のお墓についての指示(6)(8)がその好例です。

  3. じっくり考える これは先にも述べた通り、例えば『古事記』を購入してから志を立て、書き始めるまで約10年位時間をかけています。あせらない、あきらめにのが宣長さんの方法です。

  4. 基本書をうまく使う 今回は、宣長の傍らに置かれていた本をいくつか展示しました(16)ケースの『日本王代一覧』や『年代記』などです。また地図や系図なども机のそばに置いて、この事件が起こった場所はどこか。時代的にはどの位置にあたるかなどを常に確認して本を読んだり、また研究したりするのです。

  5. 複数のテーマを持つ これは高い志を立てて進めという宣長さんの教え(『うひ山ぶみ』)と一見反するようですが、実は志を遂げるための方法でもあるのです。だから、志までは行かなくてもいくつかの目標を並行して進めていっています。例えば『古事記伝』着手前後に『源註拾遺』(13)を写したり、『古今著聞集』を抜き書き(『本居宣長随筆』(12))するのはその例です。

  6. 全体眺望 宣長さんは高いところが好きでした。全体眺望が得られるからです。地図が好きなのもそのためでしょう。学問でも同じです。空間、時間の広がりの中での位置付けをいつも心がけています。

  7. 気分転換 たまには息抜きも必要です。宣長さんの場合、鈴やまた歌を読むことが格好の息抜きになったようです。


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