『源氏物語』が書かれてちょうど1000年。 その長い時間の流れの中で、この物語の評価と、読み方で決定的な役割を果たしたのが宣長の『源氏物語玉の小櫛(たまのおぐし)』でした。 この本の完成で、8割から9割が決まったといっても言い過ぎではないはずです。 しかし宣長がこの場に居合わせたら、 「私は『源氏物語』を研究していない、愛読しただけだ」 このように言うかもしれません。 宣長にとって「源氏」は愛読書であり、 冷静な研究者の目で分析したり論じたりはしていないのです。