宣長と源氏物語展への誘い <4>   

殿様の力


 医者としての仕事や、『古事記伝』執筆、親戚付き合いに家計簿も書くという多忙な毎日の中でも、宣長の「源氏」講釈は40年にわたって続けられました。
  その評判は次第に高くなり、今の島根県浜田市の大名・松平康定は自分の家来・小篠敏を松坂に留学させ講釈を聴講させます。
 報告を聞いているうちに我慢できなくなり、
とうとう徳川将軍の代わりに伊勢の神宮に参拝するというチャンスを捉まえて、
松坂の本陣・美濃屋で夢にまで見た宣長の『源氏物語』講釈を聴講するのです。

 それだけでは足りなくて宣長に注釈書の執筆を依頼します。
 多忙な宣長は断りたいのですが、何と言っても好きな「源氏」のことだけに
やむなく承諾して書いたのが『源氏物語玉の小櫛』です。
 巻6まで書き終えた時、宣長はいったん筆を置きます。
 私ももうすぐ70歳。残された時間はあと僅かだろう、しかも『古事記伝』は未だ完成していない。
 他にも仕事がある。ひょっとして、もう少し生きることが出来、ぼけずに暇があるなら続きを書こうと。
 しかし結局残りも書いて、全9巻が完成したのは68歳でした。

 


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