宣長と源氏物語展への誘い <11>   

幻視 紫式部 


 八月十五夜月見の宴に、
『源氏物語』の文章を模した和文を出し合ってみましょう、と稲懸大平の提案があった。
 日も近づいたある夜、どのように書こうかと思案していると、異様な音が聞こえてきた。
 たしか京都の葵祭で見た牛車がこんな感じだったと思っていると、やがて家の前で止まった様子。
 おそるおそるのぞいてみると、そこから、やんごとない女房が降り立った。なんと紫式部であった・・

というお話。

 創作といってしまえばそれまでですが、宣長は式部を幻視しても不思議でないほど、
この物語に耽溺していました。(『鈴屋集』巻7 「八月ついたちごろ稲掛大平が十五夜の円居に出すべき月の文ども人々すゝめて源氏物語の詞つきをまねびてかゝせけるにたはぶれにかける文」


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