『玉勝間』を読もう (8/8)
らんら ん
和歌子和歌子
 

8,『玉勝間』の面白さ


ら ん

好きなものや嫌いなものも書いてありますか。
和歌子  花の中では山桜の葉赤く照りて細きがまばらに混じりっているのが一番(巻6「花のさだめ」上230)。
 町では京都。72歳の時に泊まった京都の家もよかったそうよ(巻13「おのが京のやどりの事」下巻)。
 間取り図も展示してあるから探してね。
ら ん 今回読まれて感想は?
和歌子  汲めども尽きぬ泉、ということかしら。

 若いころのノートを見ていたら、当時興味を持って書き抜いた漢籍の一節があった。
 今読んでも面白いので引くと言って、
『厳滄浪詩話』の、
「詩の是非、必ずしも争われず、
試みに己が詩を以て、古人の詩の中に置きて、識者に与えこれを観するに、弁ずること能わず、則ち真に古人なり」
という一節を写し、
「歌もさること也」といっています(巻10「詩の事いへるから人の詞一ツ二ツ」下12)。
 これって『国歌八論斥非再評の評』の宣長の有名な言葉
「姿ハ似セガタク意ハ似セ易シ・・・試ニ予ガヨメル万葉風ノ歌ヲ万葉歌ノ中ヘ、ヒソカニマジヘテ見センニ、此の再評者決シテ弁スル事アタハジ」
とよく似ていると思わない?

 また「十二支の巳を美(み)といふ事」(上 349)を読むと、
宣長っていろんな事を考えていたんだなあと感心しますね。
 個人的には、神社の名前がなまって神様の性格そのものも変わる(巻12「吉野水分神社」下111)という箇所は、
信仰や神観念を考える上で重要だと思うな。

 もう一つカミの話。近世の書とか水墨画で紙に書かれているものがたくさんあることは知ってるでしょ。
 あの紙ってどんな紙?
ら ん どんな紙って、和紙でしょ。
和歌子  本や手紙、懐紙、短冊と言った比較的小さい物は和紙だけど、
大きな作品や長い物は実は中国から輸入された竹紙が多いのよ。
 展示品では「本居宣長四十四歳自画自賛像」もそうね。
 表面がきめ細やかで吸水性もいい。
 耐久性の問題はあるけど、書くには最適な紙だそうよ。
 その話を聞いて「紙の用」(巻14下209)を見ると
「物かくにはなほ唐の紙に及(シク)ものなし」
って書いてあるの。
なるほどなあと思ったわ。

 また、 針の穴をミミヅといったとか、人が去った後を掃くタブーだとか、
三味線を和歌に詠めと頼まれた話など、ぱらぱら見て。
 きっと発見があるはずよ。
ら ん 読もうと思って開いてみたら最初のページでいやになってしまいました。
和歌子  最初から読まずに、拾い読みしたらいいと思う。
 読み方は、長い物はざっと飛ばし読みして、また読み直す、
これが秘訣です。
 宣長が『うひ山ぶみ』でも言っているように、
「初心のほどは、かたはしより文義を解せんとはすべからず、
まづ大抵にさらさらと見て、他の書にうつ」
るようにして下さい。
 音読するのも良いかもしれません。
 逆に短いもの、つまりメモはていねいに読む。

 それと「漢意」や「道」など国学者としての発言も重要視する人もいるけど、むしろ今回取り上げたような、大上段に振りかぶらない項目の方が、『玉勝間』に相応しい気がします。
 いかがですか。
ら ん 「玉勝間」という名前は宣長の作った言葉ですか?
和歌子  違うわ。『万葉集』にも出ています。
 19歳頃に書いた『和歌の浦 二』に、
「万葉拾穂抄口訣【季吟撰】」からの引用として 「十二○玉勝間(タマガツマ)【本文アリ、秘訣別ニ注ス云々】」
とあるのが、この言葉と出会った最初かと思います。



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