浩三自筆書簡


  封筒


(封筒宛名)「多気郡斎宮村附近/金剛坂/小林茂三君」
(封筒差出)「宇治山田市吹上町/ラ・デルタ/〆/織物商〔カネタ〕
        合名會社竹内商店/昭和14年8月13日」


注1 封筒は上部が破れているため、封筒の宛名側には切手に似せたイラストが描かれている。
注2 封筒の差出側で浩三の自筆部分は、「〆」・「ラ・デルタ」・「14」・「8」・「13」と竹内商店の印字の部分の墨消し部分のみであとは印字(但し、竹内商店の電話番号と振替口座番号については翻刻を省略した)

  本文


モツチヤン。
オレはうれしくなつたよ。
君の文をよんで。
よみながらにたにた笑ひたくなつてきた。
君らしく細い神経の文なのでうれしかつた。
人の文をひひようするほどボクはえらくな
いからひひようはしないが、うまくかけてゐ
たと思つた。
 君が、もつとすきになつた。
 ボクは君の少女らしい神経が好きだ。

 ペンネームはあまりかんしんしなかつた。
 茂三 MOZOOてのがいいよ。
 間崎だとか江波だとかいつた名があるのは、どう
云つもりかしらんが外の名にした方がよくないだら
うか。
 またあおう。きてくれ。
 あつて話せばいいのだが、手紙がかき【な】たくなつた
のでかいた。

(以上第一紙)


おたがいにしつかり「勉強」しよう。
そして、生活をすることをまなぼう。
オレは本当の生活をもとめてゐる。

洋子はいい友だちである、恋人ではない。
友だちは同性とかぎらない。

北方の蜂の発行の仕事に〔そろそろ〕かかるつもりだ。
第三号は東京へ行つてから第三号と一しよ
にわたすよ。
これからずつとつづけて行こうよ。
そして北方の蜂を、ぶんぶん青空へとば
そうよ。

 君は、高木先生がすきなものをボクたちにたづ
ねたとき青空だと云つたネ、青空はまつ
たくいい。ボクたちは若いんだ。青空の下
をスクラムくんだ、すすもうよ。
     さいなら

        La Delta.

(以上第二紙)

 


注3 四百字詰原稿用紙(「コクヨの 163」「十行 廿字詰」)で「No.」の箇所に「1」と浩三が原稿枚数を記載。
注4 【な】は見せ消ち。
注5 四百字詰原稿用紙(「コクヨの 163」「十行 廿字詰」)で「No.」の箇所に「2」と浩三が原稿枚数を記載)。「La Delta.」は欄外に記載。
注6 〔そろそろ〕は、浩三自身による加筆。

2007.1.21