第36回 鈴屋学会大会

◆ 公開講演会

仁斎から宣長へ  ※聴講無料

  講師:京都大学名誉教授 大谷 雅夫 先生
  日時:4 月20 日(土)14:00 より
  会場:松阪市産業振興センター3階研修ホール
     (三重県松阪市本町2176 TEL:0598-26-5557)

【内容】
 本居大平「恩頼(みたまのふゆ)」は、宣長の学問に恩恵を与えた先学を図示するところに、京都遊学中の漢学の師であった「屈景山」や、私淑した「契沖」とともに、「ソライ」「ダザイ」「東ガイ」らの儒者の名前を書き入れている。
 そのうちの「東ガイ」は、京都の古義堂の伊藤東涯。父仁斎の学問を祖述し、その著書の校訂、刊行に生涯を捧げた人であった。「恩頼」の「東ガイ」を「仁斎」に、または「仁斎東涯父子」に読みかえることも許されるであろう。
 仁斎、あるいは古義堂の儒学は、どのようにして宣長の学問の養いとなったか、それを考えたい。
 宣長の「もののあはれ」の説は、朱子学の勧善懲悪説などを強く批判し、歌や物語は、そのような倫理的教誡を目ざすものではなく、ものごとに触れることにより動く「あはれ」を人と共有し、自他ともに慰めを得んとするものと説く文学論であった。文学の価値を道徳や政治から解放する近代的な文学観と、それを高く評価することの多いものであろう。しかし、それは一面的な見方に過ぎないと思う。
 「もののあはれ」の説は、人の「あはれ」をありのままに示す歌や物語を読むことによって、世間の実情にひろく通じ、人の心をふかく知って、やさしく、ものやわらかな人間、すなわち「よき人」になることができると主張するものでもある。読者論の立場からは、文学をむしろそのような倫理的な効用をもつものと論じるものであった。
 仁斎の「恕」の思想、「思ひ邪(よこしま)無し」を「直」とする独自の学説が、「屈景山」に、また京都の歌壇に受容されたさまを示すことによって、仁斎の学問が京都遊学中の宣長をその「もののあはれ」の説に導いていった事情を明らかにしたい。


【講師】
大谷おおたに雅夫まさお先生
 昭和26 年(1951)大阪府生まれ。昭和55 年(1980)京都大学大学院文学研究科単位修得退学。大谷女子大学(現在、大阪大谷大学)、京都府立大学を経て、平成4 年(1992)から平成28 年(2016)まで京都大学助教授、教授。現在、京都大学名誉教授。専門は日本漢文学をふくむ国文学。和漢比較文学。著書、『歌と詩のあいだ―和漢比較文学論攷―』(岩波書店)、岩波文庫『万葉集』(共著)など。


◆ 研究発表会    

  日時:4 月21 日(日)9:30 より(9:00 受付開始)
  会場:本居宣長記念館2階講座室
  ※聴講には、資料代500 円が必要です。

 

 午前の部 9:30 〜
  ○ 『古事記伝』における「神」の注釈と「名」の注釈
                      
筑波大学(院) 河合 一樹
  ○ 伴信友『史籍年表』刊行前夜
                         
鹿児島大学 亀井 森
  ○ 最末期の富士谷派―富士谷成文『結脚抄師説』『挿頭抄師説』再考―
                      大阪産業大学
  但馬 貴則
  ○ 寛政九年十一月二十七日付蒔田必器宛橋本経亮書状について
             慶應義塾大学附属研究所斯道文庫
 一戸 渉

 午後の部 13 : 30〜
  ○ 宣長の学問所・文庫設立計画について
                        
中京大学  中川 豊
  ○ 『古事記雑考』の仮名遣い
                        
相愛大学  千葉 真也
  ○ 伊勢御師春木隼人の文化的ネットワーク
                         
同志社大学  神谷 勝広


◆主催:鈴屋学会  ◆共催:本居宣長記念館  ◆後援:松阪市教育委員会


≪お問い合わせ≫
    鈴屋学会事務局(本居宣長記念館内)
    TEL 0598-21-0312
    Mail norinaga@js8.so-net.ne.jp

≪鈴屋学会とは?≫
 鈴屋学会は、本居宣長とその周辺及び国学研究の進展と研究者相互の連絡をはかることを目的に、昭和59 年12 月に発足しました。現在の会員数は201 名(2019 年3 月現在)。代表委員は千葉真也相愛大学教授です。本居宣長記念館に事務局を置き、毎年4 月に鈴屋学会大会を開催するほか、宣長十講を本居宣長記念館と共催し、また『鈴屋学会報』(年1回)を刊行しています。

 

2019.3.22